今回ご紹介するセラミドは、私たちの肌機能、特に肌のバリア機能において重要な役割を担っており、肌からの過剰な水分の損失を防ぎます。
また、細菌などの外部からの侵入を防いだり、生体機能の調整をしたりと様々な役割を持っています。
近年の研究報告とともにセラミドの機能性をご紹介いたします。
目次
肌の保湿(バリア機能)に欠かせないセラミドとは
人は加齢や生活環境の変化などにより、肌の保湿力が低下し、乾燥肌や肌荒れの原因となっていることがわかっています。
セラミドは、スフィンゴシン塩基と脂肪酸がアミド結合した構造を持っており、現在、4種類のスフィンゴシン塩基と3種類の脂肪酸の組み合わせによる12タイプの構造が確認されています。
また、セラミドは細胞膜を構成する成分の一つであるスフィンゴ脂質の基本骨格となっており、セラミド骨格に糖やリン脂質など別の分子が結合することでその多様性を生んでいます。
例を挙げると、グルコースが結合したグルコシルセラミドやリン脂質であるホスホコリンが結合したスフィンゴミエリンがあります。
これらは、肌保湿効果などの美肌機能をもっており、健康食品や化粧品などにも配合される成分です。
セラミドがもつ多様な機能性
セラミドは、様々な機能を持っています。
大きく分けると2つで、一つは細胞間の情報伝達脂質として生体機能を調整をする役割、もう一つが保湿などの細胞間脂質としての役割です。
【情報伝達としての役割】
情報伝達としての役割は、細胞増殖の抑制や、細胞分化促進、細胞死誘導などがあります。
これは、タンパク質リン酸化酵素やタンパク質加水分解酵素の活性化や、受容体などの活性化により、細胞内情報伝達を刺激し、細胞機能を調節するというものです。
この役割により肌を含む各器官の機能をコントロールしているのでしょう。
【細胞間脂質としての役割】
細胞間脂質としての役割は、表皮バリアを形成し皮膚の防御機能を高める作用です。
セラミドは、表皮の細胞間脂質の主要成分で、角化細胞同士を接着するような役割をもち、これにより肌の保湿(バリア機能)を発揮します。
肌の構成要素として有名な、ヒアルロン酸やコラーゲン、エラスチンなどと一緒に、それぞれの役割を果たし肌の健康をたもっています。
セラミド配合化粧品での肌保湿効果は10年以上前から示されていますが、近年では食事やサプリメントとしてはグルコシルセラミドなどによる皮膚機能改善効果についても研究がなされています。
動物試験や人での臨床試験において、経口摂取で皮膚の水分蒸散を抑え、肌の保湿力(バリア機能)を有意に改善したという報告が多数あります。
生体内でのセラミド合成を活性化
また、直接的にセラミドを取り込むのではなく、生体内のセラミド合成機構を活性化するといったアプローチもあります。
セラミド合成に関わる物質の一つにセラミド合成酵素というものがあります。
セラミド合成酵素はこれまでに1~6のタイプが報告されていますが、特に肌で働くことがわかっているセラミド合成酵素3が欠損すると、肌の保湿力が低下したり、肌感染症にかかりやすくなったりという報告もあります。
佳秀バイオケムが開発したバージンプラセンタ®には、セラミド合成酵素3,4の遺伝子発現促進効果が確認されており、肌の保湿力(バリア機能)に寄与することが期待されます。
セラミド合成の過程で生まれた代謝物には、これまでご紹介した役割以外にも、生体機能調節の一つとして免疫機能を高めるといったものも報告さえています。
それは、カテリシジンやβ-ディフェンシン2、β-ディフェンシン3などの抗菌ペプチドの機能を活性化させるといったメカニズムです。
このようにセラミドには、生体内で様々な機能があり、まだまだ奥が深い物質です。
プラセンタがどのようにセラミド合成経路に関わっているのかも興味深いところです。
参考文献
内田良一. セラミドとその代謝産物の皮膚における役割. Journal of Japanese Biochemical Society, 2017, 89.2: 164-175.
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MIZUTANI, Yukiko, et al. Ceramide biosynthesis in keratinocyte and its role in skin function. Biochimie, 2009, 91.6: 784-790.
JENNEMANN, Richard, et al. Loss of ceramide synthase 3 causes lethal skin barrier disruption. Human molecular genetics, 2012, 21.3: 586-608.