プラセンタ(胎盤)は注射剤(ヒト胎盤のみ)や化粧品、健康食品などで使用され、様々な効果が出ていることを耳にします。
しかし未だ未知の部分が多い素材でもあります。
特に、「プラセンタ内のどの成分がどのような作用で効果を示しているのか」については我々原料開発者の課題でもあります。
そんなプラセンタに含まれる成分を見ていきましょう。
目次
胎盤には美容にうれしい成分が豊富に含有
NMF(Natural Moisturizing Factor:天然保湿因子)
プラセンタエキスには、アミノ酸やミネラル、ヒアルロン酸、コラーゲンが含まれています。
これらの成分はNMFとしてもはたらきます。NMFは、水分を肌に取り込み、留めるはたらきがありますので吸湿性、保湿性に優れます。
肌に塗布すると、うるおい感の持続を感じます。
成長因子(サイトカイン)
胎盤には10箇月かけて胎児を赤ちゃんにまで成長させるほどの多様な細胞の構成成分があります。
また、EGF(上皮成長因子)やFGF(線維芽細胞成長因子)といった皮膚細胞の増殖に必要なサイトカインも含まれているといわれております。
ヒト胎盤での研究において、妊娠女性の羊水に含まれるEGFの量は妊娠週数と共に有意に増加し、EGF濃度と胎盤重量とは相関性があることが示されています。
ホルモン
プラセンタには女性ホルモンが含まれていることはよく知られていますが、化粧品用のプラセンタエキスや健康食品用の原料規格ではエストラジオールやプロゲステロンなどが検出されてはいけないこととなっており、天然女性ホルモンの代表格であるステロイド型の両者は市販のプラセンタエキスには含有されていません。
しかし、ホルモンの定義は体内の特定の部分で分泌され、血管などで運搬された後、別の細胞で効力を示すものとされていますので、何もステロイド型である必要はありません。
別の例としてペプチド型のホルモンがあり、プラセンタエキスにはこれが含まれると考えており、プラセンタエキスのもっとも大切な成分の一つであると考えています。
ペプチド型ホルモンの意義とは?
ペプチドとは?
いくつか(2つ以上)のアミノ酸が連なったものをペプチドと呼びます。アミノ酸が連なる量が多くなる(約90個以上)とタンパク質と呼ばれるようになります。
ペプチドもタンパク質も体内で合成される方法は同じで、遺伝子DNAを元に合成されます。
2重らせん構造の遺伝子DNAは細胞核内でタンパク(ペプチドも含む)合成の際にらせんがほどけて遺伝子DNAが複写(生化学的には転写という)されたmRNAが合成されます。
mRNAは細胞核外に出て、リボゾームというタンパク質合成酵素によりmRNAの情報通りにアミノ酸を連ねていってタンパク質を合成(生物学的には翻訳という)します。ペプチド型ホルモンも同様に体内で合成されると考えられます。
ペプチド型ホルモンの意義
アミノ酸配列が既知のペプチド型ホルモンの例として、オキシトシンが挙げられ、その配列は以下のとおりです。
(Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly)
Cys:システイン、Tyr:チロシン、Ile:イソロイシン、Gln:グルタミン、Asn:アスパラギン、Pro:プロリン、Leu:ロイシン、Gly:グリシン
オキシトシンは「幸せホルモン」と呼ばれ、この若干9つのアミノ酸配列がストレスを緩和し幸せな気分をもたらします。
オキシトシンの他にも、成長ホルモン放出ホルモンやメラニン細胞刺激ホルモン、インシュリンなどもペプチド型ホルモンであり、体内には数えきれないほどの種類があります。
それらの血中濃度は非常に低濃度ですが、少量ながらも抜群な生理活性を示します。
色々な種類のペプチド型ホルモンが様々な活性を示すおかげで、未熟な臓器であっても胎児が生命を育むことを可能にしていると考えています。