美容健康素材として安定した人気を誇るプラセンタエキスの「プラセンタ」とは何かご存知でしょうか。
ズバリ胎盤のことです。現在ではプラセンタサプリメントも様々なメーカーから販売されていますが、昔から産後に胎盤を食べるという文化もあります。
実は胎盤を食べることは哺乳類の本能とも考えられます。そんな食す胎盤についてご紹介します。
目次
神秘の臓器:胎盤(プラセンタ)とは
胎盤(プラセンタ)は、図1に示すように胎児と母体とを繋ぐ器官で子宮動脈を通じて絨毛間腔と繋がっており、血液を絨毛間腔に噴流して胎児の成長に必要な栄養や酸素等を送りこんでいます。
また、胎児の血管と繋がる臍静脈、臍動脈は絨毛組織により絨毛間腔とは隔離された状態になっていて、ホルモンやサイトカインの産生・分泌も行われ、胎児に必要な成分の溜まり場となっています。
母体と胎児は血管では繋がっておらず、胎児には絨毛組織表面の絨毛突起にはりめぐらされた臍動脈、臍静脈からのびた毛細血管より絨毛間腔の栄養が送られています。
胎盤は、呼吸、胎児への栄養物供給、胎児からの排泄、母体-胎児間内分泌物質交換、胎盤内代謝、たんぱく質合成、ホルモン産生、免疫等胎児の成長と生命維持にかかわる大切な役割を担う臓器にもかかわらず、五臓六腑にはカウントされません。
着床後に胎児を育てるだけのために形成され出産後に体外へ排出される胎盤は、"神秘"に包まれた臓器なのです。
人が胎盤(プラセンタ)を食す風習があった!?
1)古来よりの妙薬
胎盤はクレオパトラ、楊貴妃、マリーアントワネットが美容に利用したといわれています。
秦の始皇帝が不老長寿の薬として、また、ヒポクラテスが医療で利用したともいわれています。
日本においても加賀の国で混元丹という滋養強壮の薬として利用されていました。
2)漢方としての利用
胎盤は非常に栄養豊富なため常温で放置するとカビや細菌により腐敗してしまいます。
干上がる前に腐敗する恐れがあるため干物にすることも難しいものです。
そのため中国では胎盤を洗ったり煮たり蒸したりした後に乾燥して、腐敗を避けて保存できるように漢方薬を仕上げました。その名は「紫可車」。
漢方にかかわる書物『諸證辨疑』では下記のようにこの紫可車は老化現象を抑え、寿命を延ばすものである旨の記載がされています。
久しく服すれば、耳聡く、目明らかに、鬚髪黒くなり、天年を延べ、寿命を益し、造化を奪う功がある
3)日本では味噌漬けで食す
昭和初期の頃、赤ちゃんに飲ませる乳が出にくい人には胎盤を食べさせるという風習があったようです。すでに胎盤の汁液には生理的に極めて多岐にわたる非常な能力を有すること、発育促進成分も含有されること、母乳を通じて赤ちゃんに届け発育を促す能力があること、が知られていました。
ただし、その胎盤は味噌漬けにしたそうです。“味噌漬”は味付け目的だけでなく、腐敗防止目的もあったのではないかと推測します。昭和初期で冷凍庫はない時代ですので、味噌漬けは食べ物を保存する常套手段だったのでしょう。
そして、味噌漬けは胎盤の素晴らしい成分をそのまま、余すことなく、機能を損なわず保存して食すことができるといった利点があり、前述の漢方薬紫可車よりも優れた和風薬膳だといえます。
胎盤(プラセンタ)を食すのは哺乳類の本能なのか?
自発的に胎盤を食す動物もたびたび目撃されております。
1)胎盤を食すのは哺乳類の本能
犬猫その他の獣類も胎盤を食すという報告があります。
また、モルモットに至っては産後胎盤を食べないと十分な授乳ができないそうです。
人においても1920年代においても文明から隔離された地方の原住民にも胎盤を食べる風習があったようです。
このように哺乳類には産後胎盤を食す本能があると思われ、文明の発達によってその本能が薄らいでいったと考えられます。
2)牝牛も食す
1920年代の島根県の農業の会報において、牝牛が分娩後に出てきた胎盤を自ら好んで食べていることや同様な傾向がみられるといったことが書かれております。
牛は草食の哺乳類で通常胎盤のような「肉」に属するものは食べないと思われがちです。
農業の会報の筆者は、以下のようにこの記事を締めくくっています。
(分娩牛の)欲するに任せ食をとらせることが自然に適ふのではないか。
このように、本能的に滋養目的で胎盤は食されるものと示唆しています。
草食動物からも本能的に食される胎盤は実に神秘的なものであるといわざるをえません。
産後以外でも摂取できる胎盤(プラセンタ)?
産後でなくても現代では「プラセンタエキス」という形で抽出されたエキスや、乾燥された粉末などを配合したドリンク剤やゼリー、ソフトカプセルなど様々な剤形で健康食品として食すことができます。
また、海外では出産後に胎盤を加熱処理し、フリーズドライで乾燥・粉末化して持ち帰ることのできるサービスもあるそうです。
自身の胎盤を刺身で食べたことがあるという女性もいるとのことで、文化として残っていることがわかります。