春から夏にかけて旬な野菜「トマト」には、リコピンやβ-カロテンが豊富ということはご存知だと思われます。
そんなトマトの赤い色の色素成分であるリコピンやβ-カロテンの効果やグルタミン酸の生体内での働きについてお話していきます。
目次
トマトに含まれるリコピンやβ-カロテンは美肌に効果的
トマトにはリコピンやβ-カロテンといった、美肌に効果的な成分が豊富に含まれています。リコピンやβ-カロテンは、黄、橙、赤色などを示すカロテノイド色素の一種であり抗酸化作用を持っています。β-カロテンは、体内でビタミンAに変化するため、プロビタミンAとも呼ばれています。ビタミンAの働きは、皮膚や粘膜の細胞を正常に保つ働きがあり、あわせて免疫力を高める働きもあります。
抗酸化作用について
抗酸化作用とは、活性酸素の働きを弱める作用のことです。活性酸素は本来、強力な酸化力で体に入ってきたウィルスや菌を死滅させる働きを持つ重要な物質です。しかし、体内で過剰に発生した活性酸素は、細胞や血管を酸化させてしまい、動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病やガン、体の老化、シミやシワ、肌あれといったの肌トラブルを引き起こしてしまいます。体内で活性酸素を分解する酵素(抗酸化酵素)を生成することはできますが、年齢とともに生成量が減っていくため、食べ物から摂取することが大切です。
吸収力をあげる方法
リコピン・βカロテンともに脂質と一緒に摂ることで、吸収が上がります。さらにトマトを細かく切る・ミキサーにかけることで、細胞壁を壊し、その中に隠れているリコピンを吸収しやすくします。トマトを食べるときには良質な油を使ったドレッシングをかけると、成分の吸収を上げるだけでなく、美肌効果をさらに高めてくれます。
ノンオイルドレッシングで食べたい方は、ナッツをサラダにトッピングして一緒に食べると良いでしょう。色々なナッツを組み合わせて食べると、オメガ3・6・9系脂肪酸をそれぞれ摂ることができます。
アーモンド:オレイン酸(オメガ9系脂肪酸)を豊富に含み、抗酸化作用のあるビタミンEも多く含んでいます。
くるみ:ナッツ類の中でα-リノレン酸(オメガ3系脂肪酸)を最も多く含んでいます。
ヒマワリの種:リノール酸(オメガ6系脂肪酸)を多く含んでいます。
トマトには消化吸収エネルギーとして使われるグルタミン酸が44%も含まれている
グルタミン酸とは
私たちの体をつくっているたんぱく質は、20種類のアミノ酸からできています。このたんぱく質を構成するアミノ酸の一つにグルタミン酸があります。20種類のアミノ酸の中には体内で合成することができない必須アミノ酸と体内で合成できる非必須アミノ酸がありますが、グルタミン酸は体内で合成することができます。
体内でグルタミン酸は、体に有害なアンモニアを取り込みグルタミンに変換します(アンモニアを無毒化)。グルタミンは血中を通り、肝臓で再びグルタミン酸とアンモニアに分解され、尿素に変換され体外に排出されます。
代謝に関わっているATPや酵素は記載してません。
また、グルタミン酸は、リラックス成分であるGABA(ギャバ)を生成したり、核酸(DNA、RNA)を構成する高分子ヌクレオチドの合成など様々な代謝に関わっています。
消化吸収エネルギーとしてのグルタミン酸
グルタミン酸といえば、旨味成分としてよく知られていますが、この旨味成分は脳に伝えられ、食欲や消化器官に刺激を与えてくれるようです。更にグルタミン酸とアスパラギン酸は共に小腸粘膜の消化吸収エネルギー源になると報告されています。グルタミン酸は体内でも合成されますが、食事からとることも必要です。
食事由来のグルタミン酸はほとんど吸収のために使われ,血液中のグルタミン酸濃度は変化しない.
トマトのアミノ酸構成で,グルタミン酸は44%も占めており,これは栄養学的には食欲を引き出し,小腸の消化吸収エネルギーとして使われ,同時に摂取した食物の吸収を支える役目を担っている
と言われています。また、トマトには野菜の中で一番グルタミン酸が含まれているようです。
引用文献
・高田式久. "トマトのアミノ酸について." 日本家政学会誌 63.11 (2012): 745-749.