昔から梅干しやお酢、レモンなど酸っぱいものは体に良いと言われています。これらの食べ物はクエン酸を多く含み「酸っぱ〜い!!」正体なのです。
今回は、「クエン酸の体内での役割」についてのお話です。
目次
クエン酸の名前の由来
クエン酸の「クエン」は日本在来種のミカン科「丸仏手柑(まるぶしゅかん)」の漢名「枸櫞(くえん)」が語源だそうです。英語では「Citrate」で、柑橘類を意味する「Citrus(シトラス)」が語源となります。
体内でのクエン酸の働き:クエン酸回路という代謝経路
1937年にクレブス博士が発見した「クエン酸回路(TCA回路)」は非常によく解明されており、生化学分野では有名な代謝経路となっています。どういう回路かと簡単に言いますと、生きるために必要なエネルギーを作るための仕組みです。
見ての通りの回路ですが、食事から摂取した糖質・たんぱく質・脂質は体内で分解・吸収されそれぞれの経路をたどり「アセチルCoA」を生じます。
(※全てが食事からではありません。)
このアセチルCoAは、オキザロ酢酸と縮合してクエン酸になります。二酸化炭素や水素を出しながら経路をグルグルと回っていきます。クエン酸回路で生じたNADH+H⁺やFADH₂の水素(H⁺:プロトン)は電子伝達系(呼吸鎖)で最終的に水となります。この過程で酸化的リン酸化の機構が働きエネルギー(ATP)を産生しています。
要するに、クエン酸回路と電子伝達系で二酸化炭素と水を出しながら、エネルギーを作り出しているのです。
YouTubeに回路の覚え方が載っているくらい有名で重要であり、私もこの歌で覚えました。
焦って食え、急いで食え、けどすぐには怖くて、
古いりんごは置き去りさ、クエン酸回路〜♩
https://youtu.be/9bpdMyxNLfQ
趣味でのウォーキング、登山では、長時間歩いているので地道にエネルギーが消耗していくのがわかります。そこで、すぐにエネルギーに変わる糖質の摂取や代謝に関わるビタミンも補給するとミルミル力が湧いてきて「クエン酸回路回り始めたかな」と、エネルギーバロメーターを体感できる瞬間に毎度興奮してしまいます。
体内でのクエン酸の働き:体内合成・体内分解
クエン酸摂取については次のA、Bの研究が行われています。
A | B | |
研究 | 動物の餌に大量のクエン酸を添加してその動物の排泄中のクエン酸量を確認した。 | 動物にクエン酸を全く与えず、長期間飢餓状態にして排泄中のクエン酸量を確認した。 |
結果 | 大量のクエン酸を摂取したにもかかわらず、クエン酸の排泄量の増加は見られませんでした。 | クエン酸を摂取していないにもかかわらず、尿中にクエン酸が排出し続けられました。 |
これらの結果は、クエン酸は体内で分解もされ合成もされていることを示します。
クエン酸は体内で合成されるのであれば摂取しなくても良いのでは?
とも捉えられますが、体内には様々な代謝経路があり、クエン酸回路から合成された物質は、クエン酸回路から離れて別の回路の出発物質にもなります。そうなるとクエン酸も体内合成だけでは追いつかないことでしょう。クエン酸回路を回すためには、クエン酸はもちろん必要ながら、図には書いておりませんが、いろんな酵素も関わってます。糖の代謝で出てくるピルビン酸からアセチルCoAにする酵素やα-ケトグルタル酸からスクシニルCoAにする酵素の補酵素として働くビタミンB1も一緒に摂取する必要があります。スタミナ弁当と聞くと「豚の生姜焼き」が浮かびますが、これは豚肉にビタミンB1が豊富で、アミノ酸ももちろんのこと多いことからスタミナ弁当となるでしょう。レモンをかけたりするともっと良いかもしれませんね。
健康食品としてクエン酸パウダーが売られていますが、水やジュースに溶かして飲んだり、料理にも使えると思っています。
スクシニルCoA
クエン酸回路の途中にあらわれますが、スクシニルCoAは赤血球に含まれるヘモグロビン(ヘム+グロビン)の成分ヘムの合成の出発物質です。ヘモグロビンが不足しているとスクシニルCoAはグリシンと反応してヘムの合成の回路に供給されることでしょう。ヘムの合成にはアミノ酸であるグリシンやビタミンB6、鉄などが必要にもなります。
体内でのクエン酸の働き:ミネラルの吸収促進
クエン酸はミネラルの吸収も促してくれます。これは、クエン酸がもつキレート作用によるものです。クエン酸はカルシウム、マグネシウムのように他の酸(※1)と反応して凝集し吸収されにくくなる金属をつかんで血液中に入り込むなどして体内中を駆け巡り、必要な場所に運ぶ重要な役割を果たしています。
カルシウム
カルシウムは骨形成に必要な成分で、骨粗鬆症の予防に欠かせませんが、体内ではそれだけではなく、筋肉の収縮や体内のイオンのバランス、体内浸透圧、血液凝固など様々な部分で必要であり、体内に一番多いミネラルです。体内のカルシウムが不足すると骨を溶かしてまで必要なところにカルシウムを運んでしまいます。
食品(魚・乳製品)から摂取したカルシウムは胃で消化された後、主に小腸で吸収されます。その際に「(※1)リン酸やシュウ酸、フィチン酸」といった酸が多いとこれらの酸とカルシウムがくっついてしまい吸収されにくくなります。
レモンに含まれるクエン酸の「キレート作用」に関する研究によると
クエン酸は「キレート作用」によってカルシウムの可溶性を高めることで、小腸からのカルシウムの吸収を促進しているというメカニズムが示唆されました。
このようにクエン酸は、エネルギー産生や他の代謝経路の出発物質を産み出したり、ミネラルの吸収の手助けなど体内で良い働きをしているのです。
では、クエン酸を化粧品に配合するのは、どうなのでしょうか?
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