2018年に80代の女性が輸血用血液製剤によってE型肝炎ウイルスに感染し、劇症肝炎で亡くなったというニュースを見ました。
輸血によるE型肝炎ウイルス感染事例は今までにもありましたが、そのほとんどが軽症で、国内での死亡例は初めてであったそうです。
この患者は高齢で、肝機能も低下していたなど、様々な要因が重なった結果だということです。
さて、このE型肝炎ウイルスとはいったいどういったものなのでしょうか。
実は、美容と健康の原料として人気の高いプラセンタとも深い関わりについてご紹介します。
目次
E型肝炎ウイルスは人獣共通感染症
冒頭で紹介した80代の女性、実はシカの生肉を食べており、E型肝炎ウイルスに不顕性感染をしていたとみられています。
不顕性感染とは、感染しているにもかかわらず、臨床的に確認しうる症状を示さない状態をいいます。
あらかじめウイルスを体内にもっていたことも、死亡につながった要因の一つだと考えられています。
E型肝炎ウイルスの感染者数は、年間約15万人と推測されていますが、そのほとんどが不顕性感染であるというのが現状です。
シカの生肉を食べて感染していたということでもお分かりいただけるように、E型肝炎ウイルスは人獣共通感染症です。
人獣共通感染症とは、言葉通り、ヒトと獣(ヒト以外の脊椎動物)に共通して罹患する感染症であるということで、E型肝炎ウイルスの他にも、流行中の新型コロナや狂犬病、日本脳炎などもこれに含まれます。
E型肝炎ウイルスはシカの他にも、ブタやイノシシの生肉や火がよく通っていない状態のものを食べることで感染する可能性があります。
E型肝炎ウイルスの特性
E型肝炎ウイルスによって引き起こされる感染症は、急性肝炎です。
B型肝炎やC型肝炎とは異なり、慢性化することはないとされています。
E型肝炎ウイルスは、主に動物の肝臓で増殖し糞便中に排出されます。
E型肝炎ウイルス粒子の電子顕微鏡写真(出典:「E型肝炎とは」(国立感染症研究所))
E型肝炎ウイルスに感染し、発症した場合、高い確率で黄疸が見られます。
潜伏期間は平均で6週間と長く、発熱や腹痛、肝機能低下などの症状が見られます。
先にも書いたように、ほとんどが軽症であり、安静にしていれば治る病気といわれています。
妊婦などまれに劇症化する場合もあることが報告されていますので、妊婦の方は十分に気を付ける必要があります。
E型肝炎ウイルスは、ヒトの消化器官を通る過程で生き残っていることから、酸性条件でも安定して存在することができると言えます。
熱に対してはウイルスの中でも耐性の強い部類に入ることが分かっており、E型肝炎ウイルスの加熱処理による不活化については様々な報告がされています。
・糞便浮遊液を用いた実験で、60℃、1時間の加熱をすることによって80%以上の不活化
・サイコロ状に切ったブタ肝臓を加熱調理した実験で、71℃、5分の加熱をすることによってブタへの感染性を失う
・培養上清を用いた実験で、70℃、10分の加熱をすることによって、ウイルスを検出しない
条件は様々ですが、E型肝炎ウイルスの不活化には、60℃から70℃での一定時間の加熱が必要であることが分かります。
バージンプラセンタ®のウイルス安全性
プラセンタとは胎盤のことですが、市場に多く出回っているプラセンタはブタ由来で、当社でも主にブタプラセンタを取り扱っています。
母豚が出産後に排出する胎盤ですが、 たとえ母豚が肝臓にウイルスを宿していたとしても、体内で胎盤や胎児に移ることはありません。
この排出後の胎盤に糞便が付着した場合、E型肝炎ウイルスに気を付ける必要があります。
ブタ胎盤を生で食べることはありませんが、加工する際に洗浄やウイルスの不活化、フィルターでの除去などの工程を経ることで、安全な状態にする必要があります。
当社でも、ウイルス不活化の実験を行っています。
ウイルスの中でも非常に耐熱性の高いブタパルボウイルスをモデルにして行いました。
ブタ胎盤より抽出したプラセンタエキスを用いた実験で、当社独自のノウハウにより63℃以下でエキス中に添加したウイルスを検出限界以下まで不活化する条件を見出しました。
そしてその条件を反映させた安全なバージンプラセンタ®エキスの製造条件を確立しています。また現在までに、プラセンタ摂取によるE型肝炎ウイルスへの感染報告例がないことからも安心してご利用いただくことができます。
E型肝炎ウイルスに感染しないために、ブタやイノシシ、シカの肉を食べる場合、決して生では食べず、芯まで火を通して食べることを推奨します。
参考文献
食品安全委員会. 食品健康栄養評価のためのリスクプロファイル(改訂版).2012
Emerson, Suzanne U., Vidya A. Arankalle, and Robert H. Purcell. "Thermal stability of hepatitis E virus." The Journal of infectious diseases 192.5 (2005): 930-933.